くびとは

耳鼻咽喉科で扱う「くび」は「頭頸部」と呼ばれ、脳と目を除く首から上のすべての領域を指します。2021年に日本耳鼻咽喉科学会が日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に名称変更したことからも、この領域に力を入れていることが伺えます。くびは体の中で一番重い頭を支え、多くの神経や血管の通り道で、咽頭、食道、喉頭、気管などの器官の集まっている重要な部位です。くびのしこりは時として悪性疾患が原因ということも考えられます。当院では、内視鏡を用いてくびのしこりの原因疾患の検索や、頸部超音波によってくびのしこりを直接加増で確認することができます。また、必要と判断した場合には、院長が兼任講師を務めている昭和大学病院頭頸部腫瘍センターや画像診断専門施設との連携によって詳しい画像検査(CT、MRIなど)がご案内可能ですので、是非当院にご相談ください。

当科で扱う疾患一覧

こんな症状の方はご受診ください

  • くびの前がはれている(しこりがある)。
  • くびの前が痛い
  • くびの横がはれている(しこりがある)。
  • くびの横が痛い
  • あごがはれている
  • あごが痛い

唾石症

カルシウム塩が固まってできた結石が唾液管を狭窄・閉塞することで、唾液腺が腫れ上がる病気です。唾石が唾液の排出路を閉塞し、唾液を排出できなくなるため唾液腺(あご)が腫れます。唾石症による腫れは、食中や食後に出現して時間とともに改善するのが特徴です。
細菌感染を起こすと、疼痛や発熱を起こします。周囲皮膚や口腔底などに炎症が波及すると、激しい疼痛、発赤、腫脹を伴う蜂巣炎や膿瘍などに進展することもあります。

検査・診断・治療

唾石が口腔の唾液腺開口部近くにある場合は触診で触知可能です。細菌感染をきたしていれば、開口部からの膿流出を確認できます。超音波検査で唾石と唾液管拡張を確認できることもあります。感染症を合併しているときには抗菌薬を投与し、口腔内から唾石を触知できる場合は、口腔内を切開して摘出します。

がま腫

がま腫とは、舌下腺から分泌される唾液が周囲にたまり、腫瘤の様に腫れる疾患です。あごが腫れるため、見た目がガマ蛙ののど袋に似ているので「がま腫」と命名されています。
一般的には痛みありません。

検査・診断・治療

触診や超音波検査を行います。腫脹部位を少し太めの針で穿刺し、透明な液体が吸引できた場合は、一時的に腫れは引きますが、以後は、手術による摘出が必要になります。

甲状腺の病気

甲状腺は首の前方でのどぼとけのすぐ下にあり、ちょうど蝶が羽を広げたような形で気管を抱き込むようについています。薄く柔らかい臓器であり、はれがなければ首を触っても分かりませんが、少しはれると手で触れるようになります。甲状腺は内分泌器官のひとつであり、細胞の新陳代謝を活発にする役割をもつ甲状腺ホルモンを作る機能を持っています。

甲状腺腫瘍

甲状腺にできる腫瘍には、良性と悪性があり、悪性の割合は男性1.9%、女性3.18%と報告されています。症状は、腫瘍が大きくなれば甲状腺にしこりや甲状腺全体の腫れ、違和感などを感じることがあります。

検査・診断・治療

甲状腺に腫瘍がみつかった場合、まずは超音波検査を行い、血液検査で甲状腺ホルモンや甲状腺腫瘍マーカーを測定します。悪性が疑われれば、精密検査として甲状腺に針を刺す細胞の検査が必要なりますので然るべき医療機関へご紹介させていただきます。

バセドウ病・橋本病

バセドウ病は甲状腺機能亢進症、橋本病は甲状腺機能低下症をきたしやすいですが、どちらも前頸部がはれることによって見つかることがあります。甲状腺機能が亢進すると動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどの症状がおきます。甲状腺機能が低下すると無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、便秘などの症状がおきます。

検査・診断・治療

超音波検査にて甲状腺がはれていることを確認したら、血液検査にて甲状腺ホルホンや自己抗体などを測定します。診断がつきましたら内分泌内科にご紹介させていただきます。

唾液腺の病気

耳下腺炎

耳下腺は、大唾液腺の中で最も大きく耳の前から耳の下に位置しています。耳下腺にウイルスや細菌が感染することによって、耳下腺炎を引き起こし、耳前部のはれや痛みが出現します。原因ウイルスではムンプスウイルス感染(いわゆるおたふく風邪)がよく知られています。

検査・診断・治療

超音波検査にて耳下腺のはれを確認したら、必要に応じて血液検査を行い、炎症の程度やウイルス感染の有無を判断します。

唾液腺腫瘍

唾液腺腫瘍とは、耳下腺や顎下腺、舌下腺といった大唾液腺や口の中に存在する小唾液腺から発生する腫瘍です。唾液腺は唾液を分泌する器官であり、この部分に腫瘍ができると顎の下・耳の前方などに腫れやしこりが生じます。良性であれば、痛みはほとんどありませんが、悪性になると腫瘍が存在する場所で痛みやしびれを生じたり、周辺の皮膚が赤くなったり顔が動かしにくくなることがあります。

検査・診断・治療

当院では、症状や触診などにより唾液腺腫瘍を疑う場合は超音波検査や血液検査を行います。診断を確定させるためには腫瘍に針を刺して細胞の検査をする必要がありますので然るべき医療機関にご紹介させていただきます。唾液腺腫瘍の治療は、手術による摘出術が一般的です。良性腫瘍の場合でも、徐々に大きくなったり、がん化する可能性がありますので早期の切除を推奨します。

頸部リンパ節腫脹

頸部リンパ節は、首の領域にあるリンパ節です。顎の下から鎖骨の上まで、首の横を中心に数珠上に存在します。10mm以下のリンパ節は通常、触れることはできませんが、ある程度大きくなると触れるようになります。リンパ節は、感染やがんの拡大を阻止する身体の防御機能を備えているため、リンパ節がはれる原因は多種にわたります。治療の必要がないこともあれば、生命に関わる重篤な病気が原因となっていることもあるため、少しでも気になる場合は当院にご相談ください。

検査・診断・治療

当院では、まず触診と頸部超音波検査を行います。リンパ節の大きさや性状を確認したのちに、原因検索のため血液検査を行います。感染症によるものを疑う場合は自然に治ることがほとんどですが、発熱や痛みを伴う場合には、抗生物質や鎮痛薬が投与することもあります。がんの転移やリンパ節のがんによるものを疑う場合は、速やかに然るべき医療機関にご紹介させていただきます。