みみとは

みみ(耳)は「音を聞く」という感覚器官ですが、それだけでなく、体の平衡感覚を制御する半規管と連結している大切な器官でもあります。耳は大きく3つの部分に分けられます。ひとつ目は、「外耳」といわれる耳の穴から鼓膜までの部分、2つ目は、「中耳」といわれる外耳から伝わってきた音を鼓膜で受けて内耳へ伝える部分、3つ目は、「内耳」といわれる音を神経の信号に変換する蝸牛、三半規管や耳石器などの平衡器官から構成される部分です。当院では、これらの器官で起きた疾患について診療いたします。

こんな症状の方はご受診ください

  • 耳が痛くて気分が悪い
  • 耳にかゆみがある
  • 耳の中から液体が出てきた
  • 周囲の音や声が聞こえにくくなった
  • 家族や友人から「話し声が大きい」と指摘された
  • 耳鳴りがする
  • 耳の奥に違和感がある
  • 耳の中が塞がっているような感じがする
  • 天井がぐるぐる回るようなめまいがする
  • 耳垢が溜まっている
  • 耳が腫れている
  • 顔の動きがわるい

当科で扱う主な疾患

難聴

突発性難聴

突発性難聴は、突然に耳が聞こえなくなる病気です。詳しい原因はまだわかっておらず、急激に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と呼んでいます。難聴だけでなく、耳鳴り、耳がつまった感じ、めまい、吐き気などの症状がみられることもあります。悪化すると難聴が残ってしまうこともありますが、早期に治療を開始すれば聴力回復の可能性が高いと考えられています。治療を行っても後遺症なく完治する方は1/3程度です。そして発症時よりは難聴が改善するが元には戻らない方が1/3程度、治療に反応しない方が1/3程度です。

検査・診断・治療

純音聴力検査を行います。めまいを伴っている場合は、重心動揺検査というふらつきの検査赤外線CCDカメラを用いた眼振検査を行います。治療は、発症後1週間以内に開始することが重要です。最もよく行われるのはステロイド薬の投与で、血管拡張剤を使う場合もあります 。これらで改善がみられない時は高圧酸素療法、ステロイド薬の鼓室内投与、星状神経節ブロックなどの追加治療が検討することもあります。

加齢性難聴

老人性難聴の主な原因は、耳の奥にある蝸牛と呼ばれる器官の中の感覚細胞が、年齢を重ねるごとに減少するためと考えられています。加齢によって感覚細胞や神経細胞が減少する明確なメカニズムは解明されていませんが、遺伝的な背景、高血圧症・糖尿病・動脈硬化などの健康要因、音響曝露(大きな音にさらされること)や喫煙習慣などの生活習慣などが関与していると考えられています。

検査・診断・治療

純音聴力検査を行い、現在の聴力の程度を評価します。加齢性難聴は、特に高い音から聴き取りにくくなるのが特徴です。残念ながら聴力を回復させる方法は確立されていませんが、早めに適切な補聴を行うことで脳の老化の予防につながります。当院では、必要に応じて補聴器外来をご案内させていただきます。

騒音性難聴

騒音性難聴とは、大きな音(ライブや工事現場など)を長時間かつ長期間(年単位)聞くことで引き起こされます。

検査・診断・治療

騒音性難聴が疑われる場合は純音聴力検査で評価を行います。初期の段階では4,000Hz周辺における聴力低下が典型的です。騒音によりダメージを受けた細胞を元にもどす有効な治療方法はありません。そのため騒音性難聴では進行予防を目的とした適切な管理が重視されます。

音響外傷

過度に大きな音が耳に入ってきた時に、内耳が衝撃を受けることで発症する難聴です。
爆発音のような、耳が痛くなる程の強大な音を突然聞いたときに発症します。

検査・診断・治療

音響外傷が疑われる場合は純音聴力検査で評価を行い、治療は突発性難聴に準じて行います。

聴神経腫瘍

聴神経とは、聞こえの情報を脳に送る蝸牛神経と平衡感覚についての情報を送る前庭神経との2種類の神経の総称です。これらの神経に生じる腫瘍を聴神経腫瘍と言います(主に前庭神経から生じます)。大部分は良性腫瘍ですが、腫瘍が神経を圧迫し、伸展させたり、耳の機能そのものを低下させることによって、めまいや難聴、耳鳴りを発症します。

検査・診断・治療

純音聴力検査を行って、聴神経腫瘍を疑う場合はMRI検査を施行する必要があります。
年齢、症状、腫瘍の大きさによって手術加療や経過観察が選択されます。

耳管機能異常

耳管は中耳腔と鼻の奥をつないでいる管状の器官です。つばを飲み込むときに開いて中耳腔圧を調節して、鼓膜に正しく音が伝わるのを助ける働きがあります。「耳管機能異常」は、耳管が開いたり閉じたりする機能に不具合が起きることで発症し、「耳管狭窄症」と「耳管開放症」の2種類に分けられます。前者の場合はダイビングや飛行機の離着陸で増悪しやすく、後者の場合は急激な体重減少などで起こりやすいといわれています。症状は耳閉感、難聴、耳痛、自声強聴(自分の声がひびく感じ)などがあげられます。

検査・診断・治療

問診、純音聴力検査ティンパノメトリーなどを組み合わせて診断します。
耳管狭窄症の場合は内服薬・点鼻薬・耳管通気療法・鼓膜切開などを行います。
耳管開放症の場合は漢方薬の内服や点鼻薬で治療を行います。

急性中耳炎

強く鼻をかんだ後、風邪を引いた後に発症することが多いですが、何の前触れもなく急に耳が痛くなることもあります。急性中耳炎になると、聞こえが悪い、耳が詰まる、痛む、発熱、耳漏といった症状が現れるようになります。小さいお子様の場合、痛みなどの違和感を上手く言葉で伝えられないため、頻繁に耳に手をやるしぐさ、何となく機嫌が悪いといった変化がみられます。

検査・診断・治療

視診もしくは顕微鏡内視鏡などで鼓膜を確認することによって行います。必要に応じて耳漏や鼻内から細菌検査を行い、原因菌を特定します。治療は、診療ガイドラインに準じて抗生物質や痛み止めなどのお薬や点耳薬を処方します。鼓膜の腫れがひどく、熱が高い場合は、鼓膜切開を行って膿や滲出液を除去することもあります。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥の中耳腔に滲出液という液体が溜まるタイプの中耳炎です。急性中耳炎に罹患した後や、長引く鼻風邪が原因となり、聴力低下をきたします。3~10歳頃のお子様に多くみられます。

検査・診断・治療

視診もしくは顕微鏡内視鏡などで鼓膜を確認することによって行います。
当院ではティンパノメトリーという鼓膜の弾性を測る機器で、鼓膜の可動制限を判断します。中耳に溜まっている滲出液を除去する治療(内服加療や鼓膜切開)と、耳に悪い影響を与えている鼻やのどの病気に対する治療とを組み合わせて行います。滲出性中耳炎を放置していると、真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎に移行し、難聴になることがあるのでご注意ください。

慢性中耳炎

慢性中耳炎は、急性中耳炎が治りきっていなかったり、何度も繰り返すなどしているうちに鼓膜に慢性的な穴ができてしまう病気です。主な症状は、聴力の低下、中耳の炎症、耳だれ(耳漏)、耳鳴り、めまいなどです。

検査・診断・治療

顕微鏡内視鏡などで鼓膜を確認することによって行います。急性中耳炎と同じように抗生物質や消炎剤などを服用します。ただし、完治させて再発を防止するには鼓膜の穴を塞ぐ手術が必要となります。鼓膜形成術や鼓室形成術などが該当し、患者様の状態をもとに判断いたします。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎は、文字通り鼓膜の一部に真珠腫が出てきてしまうタイプの中耳炎です。中耳の炎症が長引き、鼓膜の窪みなどに耳垢が入り込んで増殖すると、塊りが作られます。その部位に細菌感染が起きると、次第に周囲の骨を溶かすようになり、病状が進行していきます。患者様によっては、三半規管が壊れてめまいを起こしたり、難聴、顔面神経麻痺といった合併症が現れるようになります。

検査・診断・治療

顕微鏡内視鏡などで鼓膜を確認することによって行いますが、CTなどの画像検査も必要となります。基本的には手術が必要になります。内視鏡などを使って真珠腫を摘出し、耳小骨の再建などを行います。

耳垢栓塞

耳垢は、空気中の埃、剥がれ落ちた皮膚、耳垢腺から分泌された汚れなどが混ざり合ったものです。耳垢が多くなり過ぎると、耳の閉塞感、難聴、耳鳴りなどの症状を引き起こします。

検査・診断・治療

耳の中を顕微鏡で見ながら鉗子や吸引管などを使用し、耳の汚れを丁寧に取り除きます。耳垢が硬くなってなかなか取れないような場合は、耳浴を行って軟らかくしてから取ることもあります。耳垢を除去しても聞こえが改善しないときは、ほかの原因が考えられるので、純音聴力検査などを追加します。

外耳道炎・外耳道湿疹

耳の穴の入口から鼓膜までの通り道を「外耳道」と呼んでいます。外耳炎は、ここに炎症が起きている状態です。主な症状は、耳の痛み、かゆみ、耳漏、耳閉塞感、聴力低下などです。耳かきや爪などによって外耳道の皮膚を傷つけてしまったり、プールや海水浴で外耳道に水が入り込んでしまった場合、そこに細菌や真菌が感染して外耳炎になることがあります。糖尿病の方は、炎症を起こしてしまうと治りにくいと言われています。

検査・診断・治療

綿棒や吸引器などによる耳掃除、生理食塩水による耳洗浄、局所への点耳薬の投与、軟膏の塗布などで症状が改善しますが、抗生物質の投与が必要な場合もあります。膿がたまって腫れている場合は、切開して膿を排出する必要があります。

めまい

こちらをご覧ください

外耳道異物

耳の中に異物(ビーズ・おもちゃ・虫・ティッシュなど)が入り込み、除去できない状態です。

検査・診断・治療

様々な鉗子を用いて除去しますが、お子様が暴れて異物がとれないケースはご紹介させていただくこともあります。

耳介血腫

柔道やレスリング、ヘルメットによる刺激などで耳介の軟骨と皮膚の間に血液がたまる病気です。

検査・診断・治療

放置すると固まってしまうため、針を刺して内部の血液を除去して圧迫します。再発する場合は、切開して出血点を凝固止血することもあります。

顔面神経麻痺

顔面神経麻痺は原因不明のことが多いですが、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされることがあります。片側の顔動かしづらくなり、コップで水を飲んだら片側の口から漏れる、目が閉じられないなどの症状で気づかれることあります。

検査・診断・治療

顔面神経麻痺の程度をスコア化して診断します。難聴やめまいを伴う場合には、純音聴力検査重心動揺計赤外線CCDによる眼振検査を追加で行います。また、原因ウイルスを特定するために血液検査を行うことがあります。1週間以内に開始することが推奨されていて、ステロイド薬や抗ウイルス薬の投与を行います。

耳瘻孔

生まれつきの病気で、耳の付け根付近に小さな穴が生じます。ほとんど症状が出ないことも多いですが、穴の中に汗や垢などの分泌物がたまり、排出され、異臭を放つこともあります。また感染を起こし、腫れや痛みが出る場合もあります。

検査・診断・治療

耳瘻孔は自然にふさがることはありません。感染を繰り返してひどく腫れるようになった場合には、抗生物質などで治療し、炎症が落ち着いたら手術により穴を摘出する治療があります。